【先代旧事本紀】神代系紀1 - 元初の神と神世七代

『旧事本紀』全十巻は、つぎのような書き出しではじまります。

「昔は自然の気が混沌として、天と地がまだ分かれず、鶏の卵の中身のように固まっていなかったなかに、ほの暗くぼんやりと何かが芽生えを含んでいた。やがて、その澄んで明らかなものは、立ち昇ってからたなびいて天となり、濁ったものは、重く沈み滞って大地となった」

「たとえていえば、泳ぐ魚が水の上のほうに浮いているようなものであった。だから、天がまず出来上がって大地はその後に出来た。そしてその後に、高天原に生まれた一柱の神の御名を天譲日天狭霧国禪日国狭霧尊と申し上げる。それより以降、ひとりでに生じられる他に、共に生じられる二代、ふたり並んで生じられる五代の、神世七代とはこのことである」

下の表はいわゆる「神世七代」をまとめたものです。
天譲日天狭霧国禅日国狭霧尊以外では、天八下尊、天三降尊、天合尊、天八百日尊、天八十万魂尊が『古事記』『日本書紀』にあらわれない神です。
ペアで生まれることを基本にし、第三代以降はそれが男神・女神の組み合わせになります(俱生、耦生)。天八下尊たちは、「別」と冠されるそれに含まれない「独化天神」(独り化る天神=ひとりで化生した天つ神)とされます。
『記』で天御中主尊に次いであらわれる高皇産霊神・神皇産霊神は、かなり遅く第七代の「別」神とされ、伊弉諾尊・伊弉冉尊のペア神と同期になります。


天譲日天狭霧国禅日国狭霧尊
(あまゆずるひあめのさぎりくにのさぎりのみこと)
一代 天御中主尊(あめのみなかぬしのみこと)
可美葦牙彦舅尊(うましあしかびひこぢのみこと)
二代 国常立尊(くにのとこたちのみこと)
別名 国狭立尊・国狭槌尊・葉木国尊
豊国主尊(とよくにぬしのみこと)
別名 豊斟渟尊・豊香節野尊・浮経野豊買尊・豊齧尊
天八下尊(あめのやくだりのみこと)
三代 角杙尊( つのくいのみこと)
別名 角龍魂尊
活杙尊( いくくいのみこと)
天三降尊( あめのみくだりのみこと)
四代 埿土煮尊( ういぢにのみこと)
別名 埿土根尊
沙土煮尊( すいぢにのみこと)
別名 泥土根尊
天合尊( あまあいのみこと)
別名 天鏡尊
五代 大苫彦尊( おおとまひこのみこと)
別名 大戸之道・大富道・大戸麻彦
大苫辺尊( おおとまべのみこと)
別名 大戸之辺・大富辺・大戸麻姫
天八百日尊( あまのやおひのみこと)
六代 青橿城根尊( あおかしきねのみこと)
別名 沫薙尊・面足尊
吾屋惶城根尊( あやかしきねのみこと)
別名 惶根尊・蚊雁姫尊
天八十万魂尊( あまのやおよろずたまのみこと
七代 伊弉諾尊( いざなきのみこと)
伊弉冉尊( いざなみのみこと)
高皇産霊尊( たかみむすひのみこと)
別名 高魂神・高木命
神皇産霊尊( かむみむすひのみこと)
別名 神魂尊
津速魂尊( つはやたまのみこと)
振魂尊( ふるたまのみこと)
万魂尊( よろずたまのみこと)

次のページ 神代系紀2・別天神系譜

天璽瑞宝トップ > 先代旧事本紀 > 神代本紀 > 神代系紀1