天璽瑞宝トップ > 先代旧事本紀 > 現代語訳 > 国造本紀
天孫・天饒石国饒石天津彦火瓊々杵尊の孫の磐余彦尊が、日向から出発され倭国に向かわれて、東征されたとき、大倭国で漁夫を見つけられた。側近の人たちに尋ねて仰せになった。
「海のなかに浮かんでいる者は何者だろうか」
そこで、粟の忌部首の祖の天日鷲命を遣わして、これを調べさせた。天日鷲命が戻ってきて報告した。
「これは、椎根津彦という者です」
椎根津彦を呼んで連れてきて、天孫はお尋ねになった。
「お前は誰か」
椎根津彦は答えて申しあげた。
「私は、皇祖・彦火々出見尊の孫で、椎根津彦です」
天孫は詔して仰せられた。
「私に従って、水先案内をするつもりはないか」
答えて申しあげた。
「私はよく海陸の道を知っていますので、道案内としてお仕えいたします」
天孫は、詔して椎根津彦を案内とし、ついに天下を平定された。
はじめて橿原に都を造り、天皇に即位された。
詔して、東征に功績のあった者を褒めて、国造に定められた。また、逆らう者は誅し、県主を定められた。
これが、国造・県主の由来である。
椎根津彦命を大倭国造とした。すなわち、大和直の祖である。
剣根命を葛城国造とした。すなわち、葛城直の祖である。
彦己蘇根命を凡河内国造とした。すなわち、凡河内忌寸の祖である。
天一目命を山代国造とした。すなわち、山代直の祖である。
天日鷲命を伊勢国造とした。すなわち、伊賀・伊勢国造の祖である。
天道根命を紀伊国造とした。すなわち、紀河瀬直の祖である。
宇陀県主の兄猾を誅した弟猾を、建桁県主とした。
志貴県主の兄磯城を誅した弟磯城を、志貴県主とした。
およそ三人の臣を選び遣わして、治めるに良いか悪いかを巡察して調べさせた。そのうえで、功績のある者を、その能力のまま国造にお定めになった。
逆らう者を誅殺し、その功績を計って、県主を定められた。
あわせて、百四十四の国に国造を任命した。
大倭国造
神武朝の御世に、椎根津彦命をはじめて大倭国造とした。
葛城国造
神武朝の御世に、剣根命をはじめて葛城国造とした。
凡河内国造
神武朝の御世に、彦己曽保理命を凡河内国造とした。
和泉国司
もとは河内国に含まれていた。霊亀二年、割いて茅野監を設置し、改めて国とした。もとは珍努宮で治めたものである。
摂津国司
法令を見ると、摂津職とある。はじめは京師であった。桓武天皇の御代に、職を改めて国とした。
山城国造
神武朝の御世に、阿多振命を山代国造とした。
山背国造
成務朝の御世に、曽能振命を国造に定められた。
伊賀国造
成務朝の御世に、皇子・意知別命の三世孫の武伊賀都別命を国造に定められた。
孝徳朝の御世に伊勢国に合併され、その後、天武朝の御代にもとのように割いて設置された。
伊勢国造
神武朝に、天降る神・天牟久努命の孫の天日鷲命を、詔して国造に定められた。
嶋津国造
成務朝に、出雲臣の祖・佐比祢足尼の孫の出雲笠夜命を国造に定められた。
尾張国造
成務朝に、天別・天火明命の十三世孫の小止与命を国造に定められた。
参河国造
成務朝に、物部連の祖・出雲色大臣の五世孫の知波夜命を国造に定められた。
穂国造
雄略朝に、生江臣の祖・葛城襲津彦命の四世孫の菟上宿祢を国造に定められた。
遠淡海国造
成務朝に、物部連の祖・伊香色雄命の子の印岐美命を国造に定められた。
久努国造
仲哀朝の御代に、物部連の祖・伊香色男命の孫の印幡足尼を国造に定められた。
素賀国造
神武朝の御世、はじめて天下が定められたときに、天皇のお供として侍ってきた人で、名は美志印命を国造に定められた。
珠流河国造
成務朝の御世に、物部連の祖・大新川命の子の片堅石命を国造に定められた。
盧原国造
成務朝の御代に、池田坂井君の祖・吉備武彦命の子の思加部彦命を国造に定められた。
伊豆国造
神功皇后の御代に、物部連の祖・天蕤桙命の八世孫の若建命を国造に定められた。
孝徳朝の御世に駿河国に合併され、天武朝の御世にもとのように分けて設置された。
甲斐国造
景行朝の御世に、狭穂彦王の三世孫の臣知津彦公と、その子の塩海足尼を国造に定められた。
相武国造
成務朝に、武刺国造の祖・伊勢都彦命の三世孫の弟武彦命を国造に定められた。
師長国造
成務朝の御世に、茨城国造の祖・建許呂命の子の意富鷲意弥命を国造に定められた。
无邪志国造
成務朝の御世に、出雲臣の祖・二井之宇迦諸忍之神狭命の十世孫の兄多毛比命を国造に定められた。
胸刺国造
岐閉国造の祖・兄多毛比命の子の伊狭知直を国造に定められた。
知々夫国造
崇神朝の御世に、八意思金命の十世孫の知々夫命を国造に定められ、大神をお祀りした。
須恵国造
成務朝に、茨城国造の祖・建許侶命の子の大布日意弥命を国造に定められた。
馬来田国造
成務朝の御世に、茨城国造の祖・建許侶命の子の深河意弥命を国造に定められた。
上海上国造
成務朝に、天穂日命の八世孫の忍立化多比命を国造に定められた。
伊甚国造
成務朝の御世に、安房国造の祖・伊許保止命の孫の伊己侶止直を国造に定められた。
武社国造
成務朝に、和邇臣の祖・彦意祁都命の孫の彦忍人命を国造に定められた。
菊麻国造
成務朝の御代に、无邪志国造の祖・兄多毛比命の子の大鹿国直を国造に定められた。
阿波国造
成務朝の御世に、天穂日命の八世孫・弥都侶岐命の孫の大伴直大瀧を国造に定められた。
印波国造
応神朝の御代に、神八井耳命の八世孫の伊都許利命を国造に定められた。
下海上国造
応神朝の御世に、上海上国造の祖の孫の久都伎直を国造に定められた。
新治国造
成務朝の御世に、美都呂岐命の子の比奈羅布命を国造に定められた。
筑波国造
成務朝に、忍凝見命の孫の阿閉色命を国造に定められた。
茨城国造
応神朝の御世に、天津彦根命の孫の筑紫刀祢を国造に定められた。
仲国造
成務朝の御世に、伊予国造と同祖の建借馬命を国造に定められた。
久自国造
成務朝の御代に、物部連の祖・伊香色雄命の三世孫の船瀬足尼を国造に定められた。
高国造
成務朝の御世に、弥都侶岐命の孫の弥佐比命を国造に定められた。
淡海国造
成務朝の御世に、彦坐王の三世孫の大陀牟夜別を国造に定められた。
額田国造
成務朝の御世に、和邇臣の祖・彦訓服命の孫の大直侶宇命を国造に定められた。
三野前国造
開化朝に、皇子・彦坐王の子の八瓜命を国造に定められた。
三野後国造
成務朝の御代に、物部連の祖・出雲大臣命の孫の臣賀夫良命を国造に定められた。
斐陀国造
成務朝の御世に、尾張連の祖・瀛津世襲命の子の大八椅命を国造に定められた。
上毛野国造
崇神朝の皇子・豊城入彦命の孫の彦狭嶋命が、はじめて東方の十二国を治め平らげて、国造に封ぜられた。
下毛野国造
仁徳朝の御世に、もとはひとつだった毛野国を分けて、上毛野・下毛野とした。豊城命の四世孫の奈良別をはじめて国造に定められた。
道奥菊多国造
応神朝の御代に、建許侶命の子の屋主乃祢を国造に定められた。
道奥岐閉国造
応神朝の御世に、建許侶命の子の宇佐比乃祢を国造に定められた。
阿尺国造
成務朝の御世に、阿岐国造と同祖・天湯津彦命の十世孫の比止祢命を国造に定められた。
思国造
成務朝の御世に、阿岐国造と同祖の十世孫の志久麻彦を国造に定められた。
伊久国造
成務朝の御世に、阿岐国造と同祖の十世孫の豊嶋命を国造に定められた。
染羽国造
成務朝の御世に、阿岐国造と同祖の十世孫の足彦命を国造に定められた。
浮田国造
成務朝に、崇神天皇の五世孫の賀我別王を、国造に定められた。
信夫国造
成務朝の御世に、阿岐国造と同祖・久志伊麻命の孫の久麻直を国造に定められた。
白河国造
成務朝の御世に、天から降った天由都彦命の十一世孫の塩伊乃己自直を国造に定められた。
石背国造
成務朝の御世に、建許侶命の子の建弥依米命を国造に定められた。
石城国造
成務朝の御世に、建許呂命を国造に定められた。
那須国造
景行朝の御代に、建沼河命の孫の大臣命を国造に定められた。
科野国造
崇神朝の御世に、神八井耳命の孫の建五百建命を国造に定められた。
出羽国造
元明朝の御世の和銅五年、陸奥・越後の二国から割いて、はじめてこの国を設置した。
若狭国造
允恭朝の御代に、膳臣の祖・佐白米命の子の荒砺命を国造に定められた。
高志国造
成務朝の御世に、阿閉臣の祖・屋主田心命の三世孫の市入命を国造に定められた。
三国国造
成務朝の御世に、宗我臣の祖・彦太忍信命の四世孫の若長足尼を国造に定められた。
角鹿国造
成務朝の御代に、吉備臣の祖・若武彦命の孫の建功狭日命を国造に定められた。
加我国造
雄略朝の御代に、三尾君の祖・石撞別命の四世孫の大兄彦君を国造に定められた。
孝徳朝の御代には、越前国に合併した。嵯峨朝の御世の弘仁十年に、越前国を割いて加賀国とした。
加宜国造
仁徳朝の御世に、能登国造と同祖の素都乃奈美留命を国造に定められた。
江沼国造
反正朝の御世に、蘇我臣と同祖・武内宿祢の四世孫の志波勝足尼を国造に定められた。
能等国造
成務朝の御世に、垂仁天皇の皇子・大入来命の孫の彦狭嶋命を国造に定められた。
羽咋国造
雄略朝の御世に、三尾君の祖・石撞別命の子の石城別王を国造に定められた。
伊弥頭国造
成務朝の御世に、宗我と同祖・建内足尼の孫の大河音足尼を国造に定められた。
久比岐国造
崇神朝の御世に、大和直と同祖の御戈命を国造に定められた。
高志深江国造
崇神朝の御世に、道君と同祖の素都乃奈美留命を国造に定められた。
佐渡国造
成務朝に、阿岐国造と同祖・久志伊麻命の四世孫の大荒木直を国造に定められました。
丹波国造
成務朝の御世に、尾張国造と同祖・建稲種命の四世孫の大倉岐命を国造に定められた。
丹後国司
元明朝の御世の和銅六年に、丹波国を割いて丹後国を設置した。
但遅馬国造
成務朝の御世に、竹野君と同祖・彦坐王の五世孫の船穂足尼を国造に定められた。
二方国造
成務朝の御世に、出雲国造と同祖・遷狛一奴命の孫の美尼布命を国造に定められた。
稲葉国造
成務朝の御世に、彦坐王の子の彦多都彦命を国造に定められた。
波伯国造
成務朝の御世に、牟邪志国造と同祖・兄多毛比命の子の大八木足尼を国造に定められた。
出雲国造
崇神朝の御世に、天穂日命の十一世孫の宇迦都久努を国造に定められた。
石見国造
崇神朝の御世に、紀伊国造と同祖・蔭佐奈朝命の子の大屋古命を国造に定められた。
意岐国造
応神朝の御代に、観松彦伊呂止命の五世孫の十埃彦命を国造に定められた。
針間国造
成務朝の御世に、稲背入彦命の孫の伊許自別命を国造に定められた。
針間鴨国造
成務朝の御世に、上毛野君と同祖・御穂別命の子の市入別命を国造に定められた。
明石国造
応神朝の御世に、大倭直と同祖・八代足尼の子の都弥自足尼を国造に定められた。
美作国造
元明朝の御世の和銅六年に、備前国を割いて美作国を設置した。
大伯国造
応神朝の御世に、神魂命の七世孫の佐紀足尼を国造に定められた。
上道国造
応神朝の御世に、元からの領主・中彦命の子の多佐臣を、はじめて国造に定められた。
三野国造
応神朝の御世に、元からの領主・弟彦命を、次いで国造に定められた。
下道国造
応神朝の御世に、元からの領主・兄彦命、またの名を稲速別を国造に定められた。
加夜国造
応神朝の御世に、上道国造と同祖で元からの領主の中彦命を、あらためて国造に定められた。
笠臣国造
応神朝の御世に、元からの領主・鴨別命の八世孫の笠三枝臣を国造に定められた。
吉備中県国造
崇神朝の御世に、神魂命の十世孫の明石彦を国造に定められた。
吉備穴国造
景行朝の御世に、和邇臣と同祖・彦訓服命の孫の八千足尼を国造に定められた。
吉備風治国造
成務朝の御世に、多遅麻君と同祖・若角城命の三世孫の大船足尼を国造に定められました。
阿岐国造
成務朝に、天湯津彦命の五世孫の飽速玉命を国造に定められた。
大嶋国造
成務朝に、无邪志国造と同祖・兄多毛比命の子の穴委古命を国造に定められた。
波久岐国造
崇神朝に、阿岐国造と同祖・金波佐彦命の孫の豊玉根命を国造に定められた。
周防国造
応神朝の御世に、茨城国造と同祖・加米乃意美を国造に定められた。
都努国造
仁徳朝に、紀臣と同祖・都努足尼の子の男嶋足尼を国造に定められた。
穴門国造
景行朝の御世に、桜井田部連と同祖・迩伎都美命の四世孫の速都鳥命を国造に定められた。
阿武国造
景行朝の御世に、神魂命の十世孫の味波波命を国造に定められた。
紀伊国造
神武朝の御世に、神皇産霊命の五世孫の天道根命を国造に定められた。
熊野国造
成務朝の御世に、饒速日命の五世孫の大阿斗足尼を国造に定められた。
淡道国造
仁徳朝の御世に、神皇産霊尊の九世孫の矢口足尼を国造に定められた。
粟国造
応神朝の御世に、高皇産霊尊の九世孫の千波足尼を国造に定められた。
長国造
成務朝の御世に、観松彦色止命の九世孫の韓背足尼を国造に定められた。
讃岐国造
応神朝の御世に、景行天皇の子・神櫛王の三世孫の須売保礼命を国造に定められた。
伊余国造
成務朝の御世に、印幡国造と同祖・敷桁波命の子の速後上命を国造に定められた。
久味国造
応神朝に、神魂尊の十三世孫の伊与主命を国造に定められた。
小市国造
応神朝の御世に、物部連と同祖・大新川命の孫の子致命を国造に定められた。
怒麻国造
神功皇后の御代に、阿波国造と同祖・飽速玉命の三世孫の若弥尾命を国造に定められた。
風速国造
応神朝に、物部連の祖・伊香色男命の四世孫の阿佐利を国造に定められた。
都佐国造
成務朝の御代に、長阿比古と同祖・三嶋溝杭命の九世孫の小立足尼を国造に定められた。
波多国造
崇神朝の御世に、天韓襲命を神の教えによって国造に定められた。
筑志国造
成務朝の御世に、阿倍臣と同祖・大彦命の五世孫の日道命を国造に定められた。
筑志米多国造
成務朝に、息長公と同祖・稚沼毛二俣命の孫の都紀女加命を国造に定められた。
豊国造
成務朝の御代に、伊甚国造と同祖・宇那足尼を国造に定められた。
宇佐国造
神武朝の御代に、高魂尊の孫の宇佐都彦命を国造に定められた。
国前国造
成務朝に、吉備臣と同祖・吉備都命の六世孫の午佐自命を国造に定められた。
比多国造
成務朝の御世に、葛城国造と同祖・止波足尼を国造に定められた。
火国造
崇神朝に、大分国造と同祖・志貴多奈彦命の子の遅男江命を国造に定められた。
松津国造
仁徳朝の御世に、物部連の祖・伊香色雄命の孫の金連を国造に定められた。
末羅国造
成務朝の御世に、穂積臣と同祖・大水口足尼の孫の矢田稲吉命を国造に定められた。
阿蘇国造
崇神朝の御世に、火国造と同祖・神八井耳命の孫の速瓶玉命を国造に定められた。
葦分国造
景行朝の御代に、吉備津彦命の子の三井根子命を国造に定められた。
天草国造
成務朝の御世に、神魂命の十三世孫の建嶋松命を国造に定められた。
日向国造
応神朝の御世に、豊国別皇子の三世孫の老男を国造に定められた。
大隈国造
景行朝の御世に隼人と同祖の初小を平定し、仁徳天皇の御代に伏布を長として国造に定められた。
薩摩国造
景行朝に、薩摩の隼人らを討ち鎮めた。仁徳天皇の御代に、長をあらためて直とした。
伊吉嶋造
継体朝に、磐井に従った新羅の海辺の人を征伐し、天津水凝の後裔の上毛布直を造とした。
津嶋県直
神武朝に、高魂尊の五世孫の建弥己己命を、改めて直にした。
葛津立国造
成務朝の御世に、紀直と同祖・大名茅彦命の子の若彦命を国造に定められた。
多褹嶋 (※ 以下脱文)