【所縁の史跡】石上神社(埼玉県坂戸市)

 

■ 石上神社 [地図]

埼玉県坂戸市の北大塚に鎮座する、石上神社です。

社地の丘は石上神社古墳と呼ばれる古墳で、成願寺古墳群に属します。成願寺二号墳ともいい、氏神塚、大塚とも通称されたようです。

『埼玉縣史』は南北45m、東西22mの規模で、前方後円墳と見ます。
近年は直径約50mの円墳とする見方のほうが強いようです。

昭和七年に行われた社地拡張工事のとき、横穴式石室が発見されています。現在は埋め戻されたのか、見ることはできません。

ここ武蔵国の「坂戸」の地名について、森田悌氏は『古代東国と大和政権』のなかで、入間郡を物部系勢力の掌握するところと見、坂戸物部に由来するものとします。

坂戸物部は『姓氏録』未定雑姓に見え、「神饒速日命、天降りましし時の従者、坂戸天物部の後なり」という、物部連の祖神・饒速日命に随従して天降ったとする伝承を持つ集団です。
その本拠地は、河内国古市郡尺度郷や大和国平群郡坂戸郷が有力視されています。

『旧事本紀』天神本紀の「須尺物部」も酒人物部あるいは尺度物部の誤記で、坂戸物部を指すものと見られています。『姓氏録』と同様に、饒速日命に供奉したとあります。

石上神社は現在は、嘉元二年に近くの渕に光を発する石を里人が見つけ、それを祀ったことに始まるとする社伝を持ちます。
しかし、古墳の上に鎮座し、石上神宮と共通する社号を持つこの神社を、坂戸物部に関係したものと見るのも面白いかもしれません。

境内の中央にある大きなビャクシンの捩じれ具合は迫力があります。県指定の天然記念物なのだそうです。

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