【所縁の史跡】己等乃麻知神社(静岡県)

 

■ 事任八幡宮 [地図]

静岡県掛川市八坂に鎮座する事任八幡宮です。
『延喜式』神名帳の遠江国佐野郡に「己等乃麻知神社」があります。

中世の八幡信仰隆盛期に八幡神が勧請され、明治期以降は八幡神社が正式名称でしたが、第二次大戦後は古来の社名を復活・保持せんとして、現社名になったそうです。

『文徳実録』嘉祥三年七月十一日に遠江国の任事神が従五位下に、『三代実録』貞観二年正月二十七日に眞知乃神が正五位上の神階に叙せられたことが見えます。
いずれの神も、当社の祭神を指すものと見られています。

祭神は、己等乃麻知媛命。
相殿に玉依姫命、応神天皇、神功皇后を祀ります。

玉依姫命と己等乃麻知媛命とを同一視する説もあるようです。

創建年代は不詳ながら、本宮山を旧社地とし、大同二(807)年に坂上田村麻呂が勅を奉じて現在地へ遷座したと伝えられます。

東海道沿いの要地に立地するため、中世以降の歌・紀行などにもしばしば姿を現しているとか。
『枕草子』にも「ことのまゝの明神」とあります。

己等乃麻知神については、『遠江国風土記伝』が
「按称眞知者、宇麻志麻知命乎、素賀国造美志印者、美志麻遅命而三代実録記眞知神乎」
とします。

同様に吉田東伍も『大日本地名辞書』の中で、
「摩知《まち》は麻爾《まに》の音通にて、随々《まま》など云語に通ひて、太占《ふとまに》に由ある神なるにや。文徳実録に任事社とあれば、己等乃麻知と云ふも事の任《ことのまま》と伝ふも、其義は通へりとみゆ」

「さて己等乃麻知と云神は、即物部氏の祖美麻知《うましまち》命にて、其子孫の創せし神祠にや。成務帝の時に物部の連の流を以て、遠江国造、久努国造、久努直、佐夜直などに任ぜられし事、旧事紀に見ゆ」
と祭神を物部氏の祖、宇摩志麻治命のことではないかと見ます。

谷川健一氏は『白鳥伝説』でこの説を踏襲し、遠江における物部氏の展開を述べています。

境内にはご神木の杉をはじめ、大きな木がいくつもあります。上写真の楠は高さ31m、目通り6m、根回り19.3mにもなるそうです。

↓本社左手にある境内社の五社神社。
祭神は、天照大神、八意思兼神、大国主命、火乃迦具土神、東照大権現です。

↓同じく境内社の金刀比羅神社です。

稲荷神社です。祭神は宇迦乃御魂神。

旧国道一号線側には、本宮遥拝所があります。
境内の案内図によると、本宮山の山上には磐座もあるようです。

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