【所縁の史跡】矢作神社(大阪府)

 

■ 矢作神社 [地図]

八尾市南本町に鎮座する、矢作神社です。
『延喜式』神名帳の河内国若江郡に、「矢作神社」がみえます。

祭神は経津主神、住吉三神、品陀和気尊、八重事代主神。

社号の矢作は矢作連氏に由来するものと見られます。
『姓氏録』未定雑姓に布都奴志乃命を祖とすることがみえ、これが祭神経津主神の根拠になっています。

矢作氏は、矢の製作に携わる矢作部を統括する氏です。
物部氏の配下にあったと見られ、経津主神とのつながりも、その関係から生じたものでしょう。
一帯は矢作遺跡で、神社の北方150メートル付近からは、古墳時代後期の3棟以上の掘立柱建物跡やそれをめぐるような三重の溝が確認されています。溝の廃絶期が丁未の乱のおこった6世紀末ということもあり、八尾市の発行する埋蔵文化財分布図では「物部一族の館跡」と呼ばれます。
矢作氏の本拠地の可能性が高いのではないでしょうか。

式内長柄神社を合祀しており、八重事代主神はその祭神です。

矢作神社は、石清水八幡の掃部別宮となった時期があり、別宮八幡とも称されました。

『三代実録』貞観十六年十二月二十九日条に、河内国の正六位上掃部神が従五位下へ叙された記事があり、これを矢作神社祭神にあてる説があったようです。
ただし、掃部氏の本拠地と考えられる河内国高安郡の掃守郷は旧南高安町の一帯が遺称地とされ、当地からはやや離れています。
掃部別宮となってからの付会でしょう。

「弁慶の七つ石」という大きな石が境内にあります。旧社殿の礎石と見られます。

参考:八尾市教育委員会『八尾市文化財調査報告15:八尾市内遺跡昭和61年度発掘調査報告書II

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