【物部八十氏】な行

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 な 

中臣葛野 (なかとみのかどの)

連姓。ウヂ名は山城国葛野郡にちなむ。
続紀天平二十年七月に正六位下中臣部干稲麻呂が中臣葛野連の姓を賜ったことがみえ、かつて中臣氏に従属していた中臣部から興った。
氏人には干稲麻呂のほか、中臣葛野連飯麻呂(続紀宝亀元年八月)、中臣葛野連広江(続紀宝亀八年正月)がいる。

饒速日命の九世孫・伊久比足尼の後裔。(「録」山城国神別)

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中臣熊凝 (なかとみのくまこり)

連姓。のち養老三年五月以降は朝臣姓。
三代実録元慶四年に「聖徳太子創建平群郡熊凝道場」とみえる大和国平群郡額田郷が本拠か。
氏人には、中臣熊凝連古麻呂(続紀養老三年五月)、中臣熊凝朝臣五百嶋(続紀天平九年九月)らがいる。五百嶋は、続紀天平十七年八月条に「従五位下中臣熊凝朝臣五百嶋除中臣為熊凝朝臣」とあり、天平十七年八月以降は中臣を除き熊凝朝臣となった。

中臣習宜朝臣と同じく、味瓊杵田命の後裔。(「録」右京神別上)

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中臣習宜 (なかとみのすげ)

連姓。のち養老三年五月に朝臣姓を賜った。中臣を付さず習宜氏とだけ表記されることもある。中臣の複姓は神祇職への従事によるものか。
ウヂ名の習宜は、天平十九年の法隆寺資財帳に、「添下郡菅原郷深川栗林一地、東限道、南限百姓家習宜池」とみえる大和国の地名にちなむ。
氏人には、習宜連諸国(続紀文武元年十一月)、中臣習宜連笠麻呂(続紀養老三年五月)、中臣習宜朝臣山守(続紀天平神護元年正月など)、中臣習宜朝臣阿曽麻呂(続紀天平神護二年六月など)、中臣習宜朝臣弘門(文徳実録天安二年三月)らがいる。

神饒速日命の孫・味瓊杵田命の後裔。(「録」右京神別上)

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奈癸 (なき)

勝姓。山城国久世郡那紀郷を本拠とする。
渡来系氏族からの冒名で物部氏族となったものか。

佐為宿祢に同祖。饒速日命の六世孫・伊香我色雄命の後裔。(「録」山城国神別)

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奈癸私 (なきのきさいちべ)

造姓。山城国久世郡那紀郷を本拠とし、その付近に置かれた私部の管掌にあたった伴造氏か。
聖武朝に、陸奥国の人・画工奈気私造石嶋(駿河国正税帳)がみえ、陸奥国に住んだものもあったことが知られる。

宇治山守連に同じく、饒速日命の六世孫・伊香我色雄命の後裔。(「録」山城国神別)

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相槻物部 (なみつきのもののべ)

無姓。下記の姓氏録と同様、「旧」天神本紀にも饒速日命に供奉して天降ったとする伝承がみえる。
ウヂ名の相槻は、用明天皇の磐余池辺雙槻宮の地、もしくは斉明紀二年にみえる両槻宮の地にもとづくか。

神饒速日命が天降ったときの従者・相槻物部の後裔。(「録」未定雑姓)

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流羅田部 (ならたべ)

連姓。依羅田部(よさみたべ)の誤記か。
和名抄にみえる摂津国住吉郡大羅(於保与佐美)郷を本拠とし、依網屯倉の田部を管掌した氏。

宇摩志麻治命の十四世孫・物部倭古連公の後裔。(「旧」天孫本紀)

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新家 (にいのみ)

連姓。和名抄にみえる河内国志紀郡新家郷を本拠とする。
また大神宮延暦儀式に、孝徳朝に新家連阿久多が伊勢国度会郡督領に任じられたことがみえ、伊勢国への展開が認められる。延喜式神名帳の伊勢国一志郡の物部神社は鎮座地名を新家といい、この氏との縁故を考える説がある。
宣化紀元年五月に新家屯倉の穀を筑紫へ運ぶのに、物部麁鹿火は新家連某を遣わしており、物部大連の配下の属したことは明らかだろう。
姓氏録未定雑姓の新家首は汗麻斯鬼足尼(うましきのすくね)命の後裔といい、宇摩志麻治命と同一視されるならこれも同族か。

宇摩志麻治命の十一世孫・物部竺志連公の後裔。(「旧」天孫本紀)

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錦部 (にしこり)

首姓。ウヂ名は、錦を織る錦部を管掌した伴造だったことにもとづく。河内国若江郡錦部郷、もしくは山城国愛宕郡錦部郷が本拠とみられる。

神饒速日命の十二世孫・物部目大連の後裔。(「録」山城国神別)

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額田 (ぬかた)

臣姓。ウヂ名は、大和国平群郡額田郷を本拠としたことにもとづくか。

伊香我色雄命の後裔。(「録」山城国神別)

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漆部 (ぬりべ)

連姓。天武十三年以降は宿祢姓も出る。ウヂ名は、漆器の製作にあたる漆部の管掌にあたる伴造だったことにもとづく。本拠は大和国宇陀郡漆部(奴利倍)郷とみられる。
氏人には、漆部宿禰道麻呂がいる。また、「紀」用明二年四月条にみえる漆部造兄は物部守屋の配下とされ、これも同族か。

宇摩志麻治命の四世孫・三見宿祢命の後裔。(「旧」天孫本紀)

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野間 (のま)

連姓。延喜式神名帳の摂津国能勢郡にみえる野間神社の地、もしくは伊予国野間郡と関係するか。

宇摩志麻治命の十三世孫・物部金連公、同十四世孫・物部金連公の後裔。(「旧」天孫本紀)

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